事業所内保育所とは、企業などが従業員の子どものほかに保育を必要とする地域の子どもを対象に設置した保育所を指します。関係各機関に届出を行って保育を提供するという意味では地域の認可保育所と変わりはありません。事業所内保育所の一種として、内閣府が始めた「企業主導型保育所」がありますが、カテゴリーとしては認可外となり、助成金の出所が認可保育所と異なります。
認可外だからといって企業主導型保育所が劣っているということは決してありません。認可保育所と同等の助成金を受給することができ、同等の設備基準のもと整備され、人員配置に至っては企業主導型保育所の方が手厚い環境となっています。
保育士としては、認可保育所と同じ環境で、認可保育所よりも職員の数が充実しているなか、子ども達とじっくり向き合うことができるのです。認可、認可外ということだけで、就職先を決めてしまうのは危険。しっかり、事業所内保育所の種類について理解を深めましょう。
各自治体が認可した保育所のことで、施設の広さや職員数、設備、防災管理、衛生管理など厳しい基準を満たしていなければいけません。2015年から「子ども・子育て支援新制度」がスタートした際に立ち上がった新しい事業であり、待機児童の多い0~2歳児の受け入れを増やすことが目的。
20人以上が定員の保育所は保育所型事業所内保育事業に、19人以下であれば、小規模型事業所内保育事業に分類されます。両者の施設や設備に関してクリアすべき基準は、ほとんど変わりません。
自宅や職場近くで子どもを預けることができない、自分の仕事に合った保育所がないといったことが原因で、仕事に復帰できない人を減らすために、内閣府が取り組みとして始めたのが企業主導型保育所です。
企業主導で職場の近くに保育所を設置することにより、従業員が仕事に復帰しやすくなるため重宝されており、徐々に数も増えています。夜間や土日も企業に合わせて開所が可能。逆にいうと、週2日のみの開所でも問題なく、認可保育所以上に利用者ニーズに即した運営が可能であるといえます。
認可保育所のような厳しい基準を満たす必要がなく、保育所の方針に合わせた設立が可能なため、比較的自由度が高い保育所のこと。とはいえ、国や自治体よって、設置・運営基準があり、届出や報告は必要です。
自由度が高い認可外保育所には、働く保護者のために24時間保育を行っていたり、自分たちの保育所らしいオリジナリティ溢れる方針を持っていたり、英語や音楽など様々なことを学べたりと、素晴らしい保育所がたくさんあります。認可外だからこその良さがある点は、覚えておきましょう。
ここまで事業所内保育所には、「認可」と「認可外」があると説明しました。以下では、「認可」「認可外」それぞれの事業所内保育所に勤める保育士にとってのメリット・デメリットをご紹介します。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
認可保育所 | 都道府県及び市区町村から認可された保育所であることから、一定の水準を満たした労働環境で保育サービスを提供できることが保証されている。 | 「保育所保育指針」に基づいた保育内容を求められるため活動が制限される。 大規模な認可保育所であれば、行事の準備が忙しい。 |
企業主導型保育所(認可外保育所) | 職員の配置基準の規定が認可保育所よりも手厚く数が多い。そのため、子ども一人ひとりにゆったりと時間をもって接することができる。 国から認可施設並みの助成金を受給できるため運営が安定しており、保育士は安心して働ける。 |
企業の就業時間に合わせて保育時間を設定する場合、シフトによっては就業時間が長くなる可能性がある。 |
メリット | 認可保育所 |
都道府県及び市区町村から認可された保育所であることから、一定の水準を満たした労働環境で保育サービスを提供できることが保証されている。 |
企業主導型保育所(認可外保育所) | 職員の配置基準の規定が認可保育所よりも手厚く数が多い。そのため、子ども一人ひとりにゆったりと時間をもって接することができる。 国から認可施設並みの助成金を受給できるため運営が安定しており、保育士は安心して働ける。 |
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デメリット | 認可保育所 | 「保育所保育指針」に基づいた保育内容を求められるため活動が制限される。 大規模な認可保育所であれば、行事の準備が忙しい。 |
認可外保育所 | 企業の就業時間に合わせて保育時間を設定する場合、シフトによっては就業時間が長くなる可能性がある。 |
結論として、事業所内保育所における労働環境の良し悪しは、「認可」「認可外」で判断できるものでありません。認可外の事業所内保育所である企業主導型保育所は、クリアしなければならない基準が多い認可保育所と比べても、設備基準、人員配置ともに劣ることなく、認可保育所と同等の助成金まで受け取ることが可能です。
また、カリキュラムに縛られない、自由な保育活動で子どもの可能性を広げられるのは認可外である企業主導型保育所。企業主導型保育所によっては、保育補助として英語講師を招くなど、多種多様な環境を設けています。
繰り返しになりますが、「認可」と「認可外」にマイナスな差はありません。保育士として転職を考える際には、「認可」「認可外」にとらわれるのではなく、その保育所の本質を見て就職先を決めるようにしましょう。