保育士をやめたいと考える人の中に、うつ病を発症している保育士さんも増えているようです。そこで、実際の保育士さんの声なども参考にしながら、うつ病の予防や対処法について考えていきましょう。
厚生労働省が公表している調査結果によると、精神疾患によって治療を受けている人の割合は年々増加しており、中でも全国のうつ病患者は平成14年の71.1万人から、平成29年には127.6万人まで増えるなど、深刻な社会問題として認知されています。
また、保育士の労働環境は、労働人口の不足による仕事の増加や、保護者からのクレームへの対応といった原因によって、肉体的にも精神的にも大変な状態になっていることもあり、保育士はストレスを抱えやすい仕事の1つといえるでしょう。
うつ病は過度のストレスや慢性的な肉体疲労によって、脳の神経伝達物質の機能が低下してしまうことで引き起こされるといわれており、さらにホルモンバランスの変化の影響を受けやすい女性では、うつ病傾向のある患者予備軍が増えやすいとも考えられています。そのため、仕事でストレスを抱きやすく女性の割合も多い現代の保育士は、全体的にうつ病リスクが高い職業と考えられるかも知れません。
一方、うつ病は自覚しづらい病気の1つともされており、自分がうつ病だとはっきり分かった時点ではすでに症状がかなり進行していて、直ちに治療を始めなければならないといったケースも少なくありません。
そのため、保育士にとって健全に仕事を続けていく上で、うつ病に対する予防やストレスケアは非常に重要です。
※参照元:厚生労働省|みんなのメンタルヘルス総合サイト(https://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/data.html#)
保育士は小さな子どもを大切に保育するという、社会的にも重大な役割を担っている職業であり、実際に保育士として働く人々には大きな責任感が求められます。すると、最初は子どもが好きという純粋な気持ちで保育士になった人でも、時には仕事に対して不安や大変さを感じてしまうこともあるでしょう。
また、子どもにはそれぞれ個性があり、保育士としてある程度の経験を重ねたつもりでも、想定外のトラブルに対する危機意識を忘れることはできません。そのため、保育士として毎日子どもたちと接していく中で、自分自身でも気づかない内に緊張感で疲弊してしまうこともあります。
どれだけ真面目に保育士として働いていても、保護者の中には理不尽なクレームをつけてくる人もいます。また、保護者との争いを避けて、園長先生や先輩保育士が自分の見方をしてくれないこともあり、そういった環境は一層に保育士のストレスを増大させていく原因です。
保育施設では現代でも、手作りディスプレイや手書きの連絡帳といった、昔ながらのスタイルが好まれる場合も多く、効率性を考えると無駄に感じられることもあるでしょう。
もちろん、手間暇をかけた仕事や作業が大切な価値を生むこともありますが、時にはそれらの仕事を自宅にまで持ち帰らなければならないこともあり、プライベートと仕事のバランスが崩れてストレスを増やす原因になることもあります。
うつ病を悪化させるリスク要因として、保育士をやめたいと思っても、人手不足や子どもへの愛情といった理由からなかなかやめると言い出せず、辛い気持ちを押し殺して働き続けるといったものも挙げられます。
とても真面目で責任感があり、誰からも尊敬される保育士として働いていたAさんですが、ある時そんなAさんに対して理不尽なクレームをつける保護者が現れたことで、状況が一変しました。そもそも問題のある保護者で、周囲もAさんに責任がないと分かっていましたが、完璧主義だったAさんは大変なショックを受け、日に日に元気を失っていったようです。その上、真面目なAさんはそれでも問題に対して向き合おうとし続け、ある時ついに限界を迎えて立てなくなり、そのままうつ病と診断されて保育園を退職するという結果になりました。
※参照元:保育士.net(https://www.e-hoikushi.net/column/254/)
保育士として関西で働いていたBさんは、ご主人の転勤に合わせて家族で北海道へ引っ越し、そこで改めて保育士として再スタートを切りました。ですが、土地柄の違いかBさんの努力や情熱が新しい保育園で空回りしてしまうこともあり、密かに悩みを抱えていたそうです。また、初めて体験する北海道の冬の寒さで体調を崩してしまい、どんどんと落ち込んでいったBさんはそのままうつ病を発症してしまいました。現在はご主人と一緒に、カウンセリングを受けながら投薬治療を続けているそうです。
※参照元:うつ病こころとからだ(https://utsu.ne.jp/experience/story01.html)
保育士のCさんは働きながらうつ病を発症し、同僚の保育士など周囲に支えられながら仕事を続けています。しかし、うつ病によって本来の業務を満足にこなせないCさんに対して、日々を忙しく過ごしながらもCさんへの配慮を続けている他の保育士から、徐々に不満の声が高まっていました。Cさんの上司は、他の保育士に対して感謝の言葉を伝えているものの、Cさん自身の状態が改善しないことで、どうしても不公平感が解消されないという状態です。うつ病の治療に取り組みながら働いているCさんの苦労を分かっている一方で、彼女の仕事をカバーしている同僚の保育士も余計な負担に苦しんでいる状況です。
※参照元:Yahoo!知恵袋(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12150639232)
うつ病を抱えながら保育士として働き続けているDさんは、そもそも以前に勤めていた保育園の環境が劣悪すぎて、現在の職場へと移ってきました。Dさん自身は子どもの世話が大好きで、元々が責任感の強い熱心な性格だったということです。しかし、本来であればうつ病の治療に集中すべきなところ、彼女の家庭環境に問題があり、仕事を休んでしまうと生活に支障を来してしまうという状態でした。そのため、休みたくても働かざるを得ず、それによって治療へ集中できずさらにうつ病が悪化するという負のスパイラルに陥っており、彼女だけでなく周囲の保育士もどう解決すればいいのか分からなく先が見えない状況だそうです。
※参照元:Yahoo!知恵袋(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12150639232)
新卒で保育士として採用されたEさんですが、やがてうつ病を発症してしまい、現在は1ヶ月の休職中だそうです。一人で暮らしていたEさんは休職をきっかけに実家へ帰省し、家族や恋人に支えられながら治療を進めているようですが、どうして自分が生きているのか、その先に何があるのか、希望や期待を持てない状態ということでした。保育士として復帰したいというモチベーションも生まれず、迷惑をかけている相手に相談もできず、誰にも告白できない悩みと無気力さを抱えながら現在も治療を続けています。
※参照元:Yahoo!知恵袋(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12215896632)
心と体はつながっており、うつ病になると心身に様々な症状が現れます。
常に気分が落ち込んでしまう、日常の些細なことでも不安感や焦燥感が強まる、自分に価値を感じられなくなって何もかもがどうでも良くなる、好きなことをしていても楽しさを感じられない、このような諸症状はうつ病でしばしば見られる症状です。
また、注意力が失われることでケアレスミスが増えたり、それによってさらに自分を責めたりといった悪循環におちいることもあります。
うつ病になると、睡眠障害や食欲不振、疲労感、過呼吸や喉の渇き、大量の発汗といった肉体的な症状が現れることもポイントです。また、やけに体を重く感じたり、頭痛や関節痛といった原因不明の痛みを感じたりといった症状が認められるケースもあります。
うつ病は古くからある病気です。しかし、うつ病の中にはシチュエーションや状況によって症状の程度が変化するものもあり判断が難しい場合があります。医学的にうつ病と診断されないような状態でもうつ病と診断されてしまったり、うつ病として治療すべき状態を怠け癖や甘えと誤解されてしまったりするケースが少なくありません。
きちんと病状について理解しながら治療環境を整えるためには、まずどのようなうつ病が存在しているのか把握しておくことも大切です。
一般的に「うつ病」として呼ばれてきた症状として、「大うつ病性障害」と呼ばれるものがあります。
様々なストレスが原因となって引き起こされる気分障害であり、抑うつ気分や意欲低下、睡眠障害や体重減少といった様々な症状が現れます。また、基本的に抑うつ状態のみが出現する病気です。
大うつ病性障害は、可能な限り速やかな治療のスタートが重要です。
なお、従来型/古典的うつ病として、大うつ病性障害の中でもさらに「メランコリー型」と呼ばれることもあります。
現代に入り、従来の大うつ病性障害(メランコリー型)とは患者の状態や振る舞いの異なる、新しいタイプのうつ病が発見されるようになりました。
これらは「非定型うつ病」と呼ばれ、現れる症状の違いや、患者になりやすい人のタイプなどから、複数の種類へ細分化されています。
また非定型うつ病は、メランコリー型うつ病と、職場環境などに起因する適応障害やパーソナリティ障害といった別の気分障害の混合型であるとも考えられており、例えば仕事へ行く前には抑うつ状態が強まるものの、好きなことをしている時には比較的健常であるといったケースもあります。
そのため、単なる怠け癖や五月病などと見分けがつきにくく、治療が必要な人の発見が遅れることもあります。
加えて、非定型うつ病の中には、従来型のうつ病と異なり、休養が必ずしも治療効果をもたらさないケースもあり、まずは正確な診断を行うことが治療の第一歩となります。
30歳前後に多いとされる非定型うつ病の一種で、朝の出社前は憂鬱なのに夕方から元気になるなど抑うつ状態が時間によって左右されたり、過食によって体重が増えたりと、従来型のうつ病とは異なる症状が現れます。また、自分の好きなことをしている間は症状が緩和されることもあり、本人の性格や気質の問題として誤解されがちな症状の1つです。
青年期に多く見られる非定型うつ病の一種で、倦怠感や自信喪失、衝動的な自傷行為、他者に対する攻撃性の上昇などが症状の特徴として現れ、物事からの逃避傾向も強まります。
また、休養と投薬治療だけでは慢性化のリスクがあり、環境変化などによる改善が期待されます。
未熟な人格が背景にあり、他罰性が強い非定型うつ病として診断されることのある症状です。
未熟型うつ病の人は、周囲から浮きやすく、適切な対処を早期に行わなければ周りからの支えを失ってしまうリスクがあります。
うつ病に関連して注意すべき症状が、双極性障害です。
一般的に気分のマイナス状態(抑うつ状態)が続くとされているうつ病(大うつ病性障害)に対して、双極性障害では気分の落ち込みと、むしろ過剰に気分が明るくなる「躁(そう)」の状態が交互に現れます。
双極性障害の中には、さらに躁状態と抑うつ状態の両方が極端に現れる1型と、抑うつ状態と軽度の躁状態が交互に現れる2型があり、抑うつ状態だけを見ればいかにもうつ病患者のように思え、躁状態の時を見ればむしろ健康的でアクティブな印象を与えます。
しかし、双極性障害は治療を要する病気であり、また大うつ病性障害とは治療法や使用される薬も異なるため、違いを正しく診断しなければなりません。
職場環境に起因する気分障害であり、必ずしも抑うつ状態が続くとは限らず、軽度な躁状態を伴うこともあります。
仕事の評価や会社の人間関係など、職場に原因があるため、環境改善が治療には必須です。
そもそも「うつ病」は症状や程度で分類されますが、「新しい病気」ではありません。
「新型うつ病」というものは近年になってマスコミが作り出した造語であり、現代型のうつ病を総称する言葉として使われています。
しかし、実際は現代型のうつ病とされる病気にも様々なタイプがあり、一概に「新型うつ病」としてひとくくりにしてしまうことは危険です。
以下のような自覚症状が2週間以上続いた場合、医療機関への受診を考えることも必要でしょう。
ただし、注意しなければならない点は、上記のような症状があったからといって、必ずしもうつ病であるとは限らないということです。
うつ病かも知れないと過度な不安を抱き、心配で余計にストレスを抱えること逆効果です。実際これらの症状はうつ病以外の病気でも現れるため、気になる項目があった場合は、まず原因を冷静に確かめるために医療機関へ相談してください。
うつ病と診断されて最初に考えるべきは自分の治療です。うつ病は歴とした病気であり、無理をして治るものではありません。そのため、有給休暇を活用したり一時的に休職したりして、休息時間を確保することが大切です。
また、もしも色々な事情で休めない場合は、職場に相談して勤務スタイルの変更などを検討していきましょう。
うつ病の治療には精神的なケアと肉体的なケアを同時に行う必要があり、それには専門医やカウンセラーといったプロのサポートが欠かせません。
うつ病に関する相談窓口には行政が用意しているものもあり、受診すべき医療機関が思いつかなければ役所へ相談することも1つの方法です。
保育士としての仕事がうつ病の原因であれば、現在の職場を変えることも重要な対処法です。ただし、ストレスの原因は常に1つとは限らず、ライフスタイルを総合的に見直して、リラックスできる状態へ改善していくことが求められます。
うつ病の治療が進んで、再び保育士として働こうと思った場合、いきなり大規模保育施設で忙しく働くのでなく、まずは小規模施設でゆっくりと体を慣らしていくようにしましょう。
例えば何かを失敗した時、それによって自信を失うのでなく、注意すべき点を新しく覚えられたと反省して次へ活かせれば、失敗が成功の種になることもあります。
根拠のないポジティブ思考でなく、きちんと自分なりに理由を考えながら、心と思考のバランスを取っていく訓練は、ストレス社会を生き抜く上で重要な対処法といえるでしょう。
薬によるうつ病治療は効果が期待されるものですが、どのような薬を使用するかは症状によって異なるため、必ず最初に専門医の診断を受けるようにしてください。
職場環境などに原因があり、休養や投薬治療だけで改善が難しい場合、専門的な知識を有する医師の管理下で、どうして休職したのかなどを文章化して自分と向き合い、根本原因の解決を目指すリワークプログラムも注目されています。
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引用元HP:株式会社メディフェア公式HP(http://medifare.jp/)
メディフェアは、長く働きづらいと思われている保育士の過酷な就業環境を改善するべく、さまざまな面を見直すことで待遇を良くし、保育士の皆さんが楽しく働くことのできる環境を目指しています。