保育士業界の人手不足について

ここでは、保育士業界における人手不足の問題について、現状や政府の対策、そもそも保育士が足りなくなる原因について分かりやすく解説しています。

保育士の人手不足の現状

保育士の人手不足を考える上で、社会がどれだけ保育士を求めているのかというニーズを表すデータとして、「有効求人倍率」が参考になります。

厚生労働省が保育士の有効求人倍率と推移について調査したところ、令和2年7月時点で保育士に対する有効求人倍率は全国平均「2.29」となっており、日本中で保育士に対する需要が、求職者の数よりも2倍以上ということが判明しました。また、東京や大阪など中には有効求人倍率が3を上回るエリアもあり、地域によって深刻な保育士不足が発生していると考えられます。

保育士の人手不足問題に関しては、子育て支援として国も解決に取り組んでおり、令和元年1月の全国平均「3.86」と比較すれば、緩やかに改善しているようにも見えます。

しかし、令和2年7月時点の全職種における有効求人倍率が全国平均「1.05」であることを考えれば、実際には依然として保育士業界の慢性的な人手不足は続いており、この傾向は今後も維持されると考えられるでしょう。

参照元:厚生労働省「保育士の有効求人倍率の推移(全国)」(https://www.mhlw.go.jp/content/000677824.pdf

保育士の人手不足が発生する原因

保育士業界で人手不足問題が生じる原因としては、いくつかのものが考えられます。

保育園へ子どもを預けたい親が増えている

長引く経済不況によって労働者の給与が上がりにくくなっており、夫が働き、妻が専業主婦として家事・育児を行うといった、かつての日本的ライフスタイルはそもそも成立しなくなりつつあります。

また、1998年に制定された男女共同参画社会基本法によって女性の社会進出が始まり、さらに2016年には働き方改革の一環として「女性活躍推進法」が施行(令和元年6月改正)され、一層に女性の活躍へ期待が高まっているという点は重要です。

当然ながら、夫婦共働きの家庭や、子どもを抱えながら働く単身世帯が増えれば、保育園に子どもを預けたいというニーズも上昇していきます。そのため、保育園としても多くの子どもを預かるために保育士を増やさねばならず、結果的に保育士の取り合いが生じるという事態につながっています。

参照元:厚生労働省|女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html

参照元:男女共同参画局|「男女共同参画社会」って何だろう?(http://www.gender.go.jp/about_danjo/society/index.html

保育士の離職率の高さ

保育士を辞めたいと考える人が多ければ、自然と保育士の離職率も高くなり、保育園が人手不足におちいることも避けられません。

厚生労働省の保育士等確保対策検討会が2015年11月に公開した資料「保育士等における現状」によれば、保育業界の離職率は全体で10.3%となっており、およそ10人に1人以上の保育士が何らかの事情で保育園を辞めているという現状が伝えられました。

もちろん、保育士を辞める理由が常にネガティブなものとは限りませんが、もしも熱意を抱いて保育士として就職し、心が折れて保育業界を去ってしまった人であれば、二度と保育士として働きたいと考えないケースもあるでしょう。

保育士の人手不足を考える上で、保育士にとって働きやすい環境や、保育士として働きたいと思える社会の構築は欠かせません。

※参照元:第1回保育士等確保対策検討会「保育士等における現状」(http://www.hoyokyo.or.jp/nursing_hyk/reference/27-2s5-5.pdf

みんなが保育士を辞めたい理由を
聞いてみました

そもそも保育士として就職しない「潜在保育士」も多い

上記の「保育士等における現状」によると、2014年度末に保育士養成施設を卒業した人はおよそ4万2千人もいるのに対して、実際に保育施設へ就職した人の数は約2万2千人とされています。また、これは正規雇用・非正規雇用といった雇用形態に関わらない数字です。

つまり、せっかく保育士として働ける資格を取得しても、保育士として働きたいと考えない人や、働きたくても働けないという潜在保育士が多ければ、人手不足はいつまで経っても解消しないということになります。

潜在保育士に対するアプローチは、保育士の人手不足を解消する重要ポイントの1つといえるでしょう。

超少子高齢化による労働力人口の不足

そもそも現代は保育士に限らず、根本的に若年層の人口不足が深刻化しており、多くの業界で労働力不足が問題視されています。また、地方から都市部へ若者が進出することで、地方の労働力人口が不足しているという問題もあります。

厚生労働省の公表している、保育士の有効求人倍率に関する資料を見ると、実は保育士の有効求人倍率は人口の多い都市部だけでなく、鳥取県や宮城県のように労働力人口の減少が課題とされている地方でも有効求人倍率3を超えているケースがあり、人口が少ないからこそ保育士も不足しているといったケースは無視できません。

参照元:鳥取県地域振興部統計課「平成27年国勢調査結果(確定値)の概要」(https://www.pref.tottori.lg.jp/secure/1065323/census_H27_shuugyou_summary.pdf

保育士不足を解消!政府の考える対策とは

保育士の賃金水準の改善

保育士という仕事に関してはそもそも役職や昇進がなく、昇給しづらいという問題がありました。

低賃金は保育士が辞めたいと考える大きな理由の1つであり、そこで国は深刻な保育士不足を解消しようと、2013年から「保育士の処遇改善制度」という公的補助金制度をスタートさせました。

保育士の処遇改善制度は、保育士の勤続年数やスキルに応じて政府から助成金を支給することで、保育士の労働条件や給与待遇を改善し、保育士業界の不平等や不満を少しでも解消しようということが主目的となっています。

なお、処遇改善制度には大きく「処遇改善等加算Ⅰ」と「処遇改善等加算Ⅱ」の2つがあります。

処遇改善等加算Ⅰ

処遇改善等加算Ⅰは、保育士の経験年数に応じて基本給や賃金を改善する制度です。保育園に勤務する保育士1人あたりの平均経験年数に応じて、2~12%の範囲で給料が加算されます。

処遇改善等加算Ⅱ

処遇改善等加算Ⅱは、保育士に「副主任保育士・専門リーダー・職業分野別リーダー」といった役職を新設することで、それぞれの役職やスキルに応じた給与加算を行う制度です。

保育士の処遇改善制度について
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働き方改革による雇用形態の格差の是正

正規雇用の保育士と、非正規雇用の保育士では、業務内容が変わらないのに給料や福利厚生に差があるというケースも珍しくなく、パート保育士やアルバイト保育士の意欲低下や離職率上昇の原因となっていました。

そこで、政府は2020年4月に「同一労働同一賃金」という制度をスタートさせ、雇用形態にかかわらず、同じように働く労働者に対しては同じような待遇を確約することを事業者に対して義務づけたのです。

また、同一労働同一賃金によって影響される対象は固定給だけでなく、様々な福利厚生も含まれており、それぞれの保育士に対する保育園の姿勢や取り組みに改めて意識が集まっています。

保育士の福利厚生について
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保育士を対象とした就職支援・就職相談の推進

厚生労働省では、待機児童問題を解消させる上で無視できない保育士不足を解決するために、保育士資格を持っている人を対象とした、就職支援・就職相談にも力を入れています。

保育士に対する支援や相談は、地域の保育士・保育園センターやハローワーク、さらには地方自治体ごとの雇用支援事業所といった施設で随時行われており、若い保育士だけでなく、保育士としてブランクのある人や未就学児を抱えている人に対しても、多角的なサポートが行われている点が特徴です。

保育士確保プラン

厚生労働省は2015年1月に、保育士を確保する計画として具体的な対策をまとめた「保育士確保プラン」を公表しました。

保育士確保プランでは保育士試験の実施回数を増やしたり、受験生の学習費用を支援したりと、様々な取り組みが掲げられています。

参照元:厚生労働省|保育士確保(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/osirase/140131-1.html

参照元:厚生労働省|「保育士確保プラン」の公表(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000070943.html

人手不足を逆手にとる!自分の条件に合った転職先を探そう

保育士が全国的に慢性的な不足状態にあるということは、保育士として就職・転職を目指す人にとって「売り手市場」であるということです。そのため、現在は以前よりも好条件・好待遇な保育士の求人も増加しています。

しかし、中には旧態依然とした保育園もまだまだ存在しており、事前に地域ごとの保育士ニーズや保育園の実態、採用活動が活発化するタイミングなど、様々な情報を収集して検討することが大切です。

保育士として意欲的に働けるよう、自分のニーズにマッチした職場選びを正しく進めていきましょう。

取材協力
メディフェアHP

引用元HP:株式会社メディフェア公式HP(http://medifare.jp/)

メディフェアは、長く働きづらいと思われている保育士の過酷な就業環境を改善するべく、さまざまな面を見直すことで待遇を良くし、保育士の皆さんが楽しく働くことのできる環境を目指しています。

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