保護者からのクレームで保育士をやめたい

保育士が保育園を辞めたいと考える理由の中でも、保護者などから保育士へ向けられる「クレーム」は大きな問題の1つです。ここでは、実際に保育士が受けたクレームの事例を紹介しながら、クレームの種類や、どうすればクレームの発生を予防できるのか、具体的な対策についてまとめました。

保育士に向けられるクレームとは

保育士に対するクレーム事例

事例1:子どもの苦手な食べ物に関するクレーム

保育士のAさんは、保護者から「子どもに給食を絶対に残さないよう食べさせてください」というクレームを受けたそうです。

一般的に保育園では、特にアレルギーなどの問題がなければ、園児は同じメニューの給食をみんなと一緒に食べますが、園児の中には苦手な食材や料理を持っている場合もあります。もちろん、苦手な食べ物にがんばって挑戦し、克服できれば園児の食育として理想的ですが、保育士が無理矢理に園児へ嫌いな食べ物を食べさせようとすれば、園児はむしろ給食や保育園への苦手意識を強めてしまう危険性もあります。

しかし、Aさんにクレームをつけた保護者は「とにかく完食させてください」という考えであり、Aさんはどうするべきか悩んでしまったようでした。

※参照元:マイナビ保育士(https://hoiku.mynavi.jp/topic/2020/04/000426/

事例2:ベジタリアンの強制

保育士のBさんは、園児の給食内容について、ある保護者から「うちの子どもには野菜以外は食べさせないでください」という要求を受けました。

要求そのものがすぐさまクレームとはならないかも知れませんが、保育園では園児の健康と栄養バランスを考えて給食メニューが考案されており、持病やアレルギーといった問題がない限り極端な食事制限は行わないという方針です。

どのような食習慣を重視しているかや、食材の選び方などについて、それぞれの家庭でルールを設けていることもありますが、保育園や保育士が全家庭の方針へ個別に配慮することは難しく、どこまでの要求を正当なものとして受け入れるべきかは、クレームについて考える上で重要なポイントです。

※参照元:マイナビ保育士(https://hoiku.mynavi.jp/topic/2020/04/000426/

事例3:通園バスのお迎え時間を我が家の都合で変更して欲しい

保育士のCさんが勤務する保育園では、園児のお迎えに通園バスを運用していますが、その運行ルールやルートは全ての利用園児の利便性を考慮した上で、特定の園児のみを優先することがないように計算されています。

しかし、中には自分の都合を最優先して欲しいと希望する保護者もおり、そのような保護者から保育士がクレームを受けることもあります。

通園バスのルートや到着時間に関して、保護者同士で相談して、より良い内容を保育園へ提案してくれる人もいますが、自分の希望ばかりを押しつけてくる保護者に対しては、どのように応えるべきかCさんは困ってしまったようでした。

※参照元:マイナビ保育士(https://hoiku.mynavi.jp/topic/2020/04/000426/

事例4:PTAの会合で決まった内容への不満を保育士にぶつける

遠足などのイベントのお土産については、保護者によって構成されるPTAで話し合いが重ねられ、どうするべきかどうか保護者の意向を重視しながら決められることが一般的です。しかし、保育士Dさんはある保護者から、「お土産の内容が気に入らないからPTA費や保育料は支払わない」と告げられ、実際に費用の支払いを拒否されてしまいました。

保護者間で話し合われ、納得した上で決定された事柄について、保育士はそもそも関与しておらず、不満だけをぶつけられてもDさんは困惑するばかりだったようです。

※参照元:マイナビ保育士(https://hoiku.mynavi.jp/topic/2020/04/000426/

事例5:運動会の雨天延期を受け入れてもらえず開催を求められた

保育士のEさんが勤務する保育園では、屋外で運動会を開催するため、天候によっては開催日を延期しなければならないこともあります。そして残念ながら大雨によって運動会の安全な開催が難しいと判断され、Eさんが保護者へ延期の連絡を伝えたところ、ある保護者から「夫が今日のために休みを取ったから、今日に運動会を開催してもらわないと困る」と求められました。

忙しく働いている保護者の中には、運動会で我が子の活躍を見守ろうと、事前に仕事のスケジュールを調整して、何とか休みを取っている人もいるでしょう。そのため、思いがけず雨天延期となってしまえば、残念に思うことも仕方ありません。しかし、その責任を保育士や保育園へ押しつけ、過度な要求を突きつける保護者に対しては、適切な対処法を考えることが必要です。

※参照元:マイナビ保育士(https://hoiku.mynavi.jp/topic/2020/04/000426/

事例6:お遊戯会の子どもの並び位置や配役が気に入らずクレーム

保育士Fさんが勤務する保育園では、園児が踊りや歌を発表する発表会やお遊戯会といったイベントが定期開催されています。ただし、Fさんの保育園には多くの園児が所属しており、どうしても発表する際には園児が保護者の前で列を作らなければなりません。

そのため、中には前列でなく後列に立つことになる園児や、中央から左右へずれてしまう園児も発生してしまいますが、子どもの立ち位置や活躍の仕方についてクレームをつける保護者も少なくありません。

保育園では基本的に、全ての園児が平等に保護者の前に立てるチャンスを考えていますが、どうしても自分の子どもだけを中心に考えてしまう保護者では、保育園の判断に納得できないこともあるでしょう。

※参照元:マイナビ保育士(https://hoiku.mynavi.jp/topic/2020/04/000426/

事例7:男性保育士にオムツ交換をさせるな

元保育士のGさんが保育園に勤めていた頃、一部の保護者から「男性保育士にトイレの見守りをさせるな」「男性保育士にオムツ交換を任せるな」という要望を出されたことがあったそうです。

Gさん自身は女性保育士でしたが、園児にとって色々な人と接することは多様性や寛容さを学ばせる良い機会だと考えており、男性保育士に対して過剰な要望を出してくる保護者に対して、複雑な思いを抱いていたそうです。

※参照元:Twitter(https://twitter.com/minaaami2001au/status/1272015990310596609

保育士に対するクレームの種類

ねちねち小言タイプ

保護者の中には、一度に大きなクレームとしては伝えてこないものの、些細なことで文句を言ったり、ことあるごとに要望を伝えてきたりといった人もいます。

このような保護者の中には、保育園の対応に特に問題がなくても、何かしらあら探しをして文句を言ってくる人もいるでしょう。

そのため、現場の保育士がどれだけがんばって良い保育を心がけていても、常に否定されてしまうので、とても大きなストレスとなります。ただし、このようなタイプは本当に大きな問題を引き起こすクレームをつけてくる可能性が低いため、ある程度までは気にせず受け流すことが標準対応になることもあります。

モンスターペアレントタイプ

モンスターペアレントタイプの保護者は、ちょっとしたきっかけで一気に大爆発を起こし、さらに怒りや不満がきっかけとなって次々に被害妄想をふくらませてしまうこともあり、保育園や保育士にとって非常に厄介な存在です。

また、モンスターペアレントタイプのクレームでは、保護者自身が自制心を失ってしまい、途中から論理的に整合性の取れていない話を始めることもあり、誠実に対処しようとしても解決策が見つからないといったケースもあるでしょう。

加えて、モンスターペアレントタイプの保護者は、普段はむしろ気さくで優しい人に見えることもあり、保育士にとってはそのような相手をひどく怒らせたことで、余計に罪悪感を強めてしまうこともあります。

しかし、モンスターペアレントタイプのクレームは明らかに理不尽なこともあり、保育士や保育園が保護者のペースに引きずり込まれないよう、冷静さを保つことが重要です。

保育士への責任転嫁タイプ

何かしらのトラブルが起こった時、全ての責任を保育士や保育園のせいにするタイプです。

これについては、実際に何かしらトラブルが発生していることもあり、その解決とクレーム対応を同時にしなければならない大変さがあります。

ただし、トラブルは必ずしも園内や保育士の監督下で発生しているとは限らず、全く無関係なことを保育園での生活と結びつけてくることもあります

そのため、こういったクレームではまずトラブルの内容や本質について確認した上で、然るべき解決策を提示したり、そもそもトラブルが生じないように対策を講じたりすることが大切です。

保育士へのクレームが増える背景

保育士へのクレームが増える背景として、保護者のメンタル面の不調やストレスなど、心理的な影響も考えられます。

心に余裕がなくなってくると、誰であれイライラしたり些細なことを必要以上に気にしたりといったことが多くなりますが、特に保育士や園に落ち度がないようなクレームは、保護者のストレス発散の方法になっていることも少なくありません。

保護者がクレームを伝える心理とは

日常生活のストレスやイラだちを保育士へぶつけている

家庭での暮らしで不満があったり、仕事でのストレスを抱えていたりすれば、精神的に余裕を失い、ちょっとしたことでも攻撃的になってしまうことはあるものです。

そしてそのような時、保護者に対して強く出られない保育士は、保護者にとって格好の標的になることもあります。

こういったクレームでは、子どもに関する事柄は単なる言い訳になっており、保育士がどれだけ子どものケアを重視しても根本的な問題解決は難しいままとなります。

加えて、理不尽なクレームを告げる保護者の中には、自分自身が八つ当たりをしていると自覚していたり、異常に怒りやすくなっていることに自分でも不安を抱えていたりする人もいます。そのことがまた別のストレスへつながりクレームを言ってしまう、という悪循環に陥っていることもあります。

自分の考えを守りたいという防衛本能

自分なりに子育て方法や子どもの環境について考えている保護者ほど、それが間違っているかも知れないという考えに恐怖心を抱きがちです。そして、自分は正しいと信じたい、自分の間違いを認められない、という思いが防衛本能を刺激して、過剰な攻撃を周囲へしてしまうこともあります。

また、そのような保護者に対して保育士が何か意見をすると、それが仮に正論であったとしても、保護者にとっては「自分を否定しようとする敵対的行為」として感じられ、いよいよ関係修復が難しくなってきます。

SNSやメディアによる保育業界への不信感

SNSやネットニュースなどで保育士の事件や、保育園の問題などの話題が盛り上がると、自分の子どもの園は大丈夫だろうかと不安になることは保護者として自然な反応です。

しかし、SNSなどでそのような話題を意識し続けることで、一層に不安が大きくなり、最終的には「子どもの通う園にも問題があるに違いない」と思い込んでしまうこともあります。

また、他の保護者とのトラブルが噂となり、保育士に対して悪印象を抱かせていることもあります。

人間は、たとえ同じ言動に触れたとしても、信頼関係があるとないとでは受ける印象が大きく異なるため、悪印象に負けないよう普段からコミュニケーションを密にしておくことが大切です。

保育士に対して「教えてあげたい」という気持ち

我が子のことは自分が最も分かっているからと、保育士に対して説明したいと考える気持ちが、時として「この保育士は何も分かっていない」という考えに発展してしまうこともあります。

また、自分の伝えたいことを相手が理解してくれないことで、「自分の話なんて誰も信じてくれない」と疎外感を抱き、それがストレスとなってクレームへつながる可能性もあり得ます。

保育士へのクレームをうまく対処するための予防と対策

クレームを事前に予防する方法

保護者とのコミュニケーション

保護者からのクレームの中には、「私の意見を聞いてもらいたい」という要望から始まっているものも少なくありません。そのため、普段から積極的に保育士が保護者とコミュニケーションを取り、保護者との信頼関係を構築しておくことは、クレーム予防で最重要な対策です。

【解決事例】

日頃のあいさつをきちんと行ったり、連絡ノートで保護者との交流を深めたりと、保護者に対して「あなたのことを尊重しています」という思いを行動で示すことは、保護者との信頼関係を強める対策として欠かせません。

知ったかぶりをしない

保育のプロとして仕事をしなければならないと意気込みすぎて、保護者からの質問に知ったかぶりをしてしまうと、しばしばクレームのきっかけになってしまいます。知らないことについては語らず、正しく確認してから改めて回答することが基本です。

【解決事例】

保護者から自分の知らないことを尋ねられた場合、まずは相手の質問や疑問に耳を傾けた上で、例えば「園長・主任に確認して、すぐにお答えします」というように、切り返しを行いましょう。

常に色々なことを学ぶ

知ったかぶりをしないことは大切ですが、いつまでも何も知らないままでは、保護者の不安は増大し、信頼関係が崩れてしまいます。保育の現場で勉強することは、保育士自身にとっても経験になるので、意欲的に学んでいく姿勢も必要です。

【解決事例】

同じことを保護者から聞かれた時、きちんと答えられるようになっていると、保育士としての誠実さをアピールできます。日頃から色々なことを意識して、気になることがあればメモなどを活用して記録しておきましょう。

保護者を一人の人間として扱う

クレーム疲れをしている保育士は、保護者をまとめて「保護者」という枠組みで見てしまいがちです。しかし、園児にそれぞれ個性があるように、保護者や家庭にも違いがあります。全ての保護者の要望に配慮する必要はありませんが、それぞれの保護者を個人として理解することも重要です。

【解決事例】

子どものママやパパとして接するだけでなく、保護者を個人として尊重する意識も大切です。例えば保護者へあいさつしたり呼びかけたりする時に、相手の名前をきちんと呼ぶことも方法として有効といえます。

園内で情報共有を徹底する

園児の情報を保育士同士で共有するように、保護者についても冷静に情報を共有し、問題が生じそうな気配があれば、園全体で注意しておくことも欠かせません。

【解決事例】

問題が生じたら記録しておき、現状がどうなっているのか園の全員がすぐに確認できる体制を整えておきましょう。クレームーに関する専用のノートや、類似の問題のリストといった資料も現状分析に効果的です。

クレーム発生後の対策

特別扱いはしない

クレームを受けたからといって、そのまま特別扱いを受け入れてしまうと、保護者はそれを成功体験としてさらにクレームをつけるようになります。改善すべき点は改善すべきですが、理不尽なことに対しては毅然とした対応も大切です。

【解決事例】

自分一人で保護者へ適切な対応を取れないと思えば、主任や園長など他の職員へ事情を説明し、園全体で一致団結して保護者へ向き合うことも欠かせません。また、クレームを告げたからといって保護者を特別扱いしない対応は、他の保護者にとって誠実さを示すことにもつながります。

最初に相手の話を聞く

責任転嫁タイプやモンスタータイプのクレームに対して、最初から聞くだけ無駄だと話し合いを拒否してしまえば、相手はさらに怒りを増大させて事態が悪化します。そのため、クレーム発生後の初期対応として、まず相手の話を聞くことが肝要です。

【解決事例】

保護者から理不尽なことを言われると、すぐに言い返したくなることもあるでしょう。しかし、ひとまず反論や提案を控えて、まずは相手が何を言いたいのか、言おうとしているのかを聞いて理解するように取り組めば、解決策が見えてくることもあります。また、メモを取りながら聞いてあげるなど、傾聴しているという姿勢を示すことも有効です。

合理的な解決策を協議する

保護者の立場になって考えると、場合によっては合理的な解決策が見つかることもあります。クレームは環境改善のヒントでもあり、それをきっかけに改めて園の状況を見直すことも1つの対策です。

【解決事例】

クレームの内容は保護者や子どもによって様々ですが、以前に似たようなクレームがあれば、その時の解決策が再びヒントになるかも知れません。園全体で保護者への対応や保育コンセプトを共有した上で、過去の解決策や、他の保護者のトラブル事例などを速やかに確認できる環境を整えておくことも必要です。

保育士としてのスキルアップとクレーム対応

どのような職種であれ、クレームや理不尽な要望に接する可能性はあります。そのため、多種多様な保護者からのクレーム対応を経験して、保育士としてスキルアップをしておくことで、将来性が広がる可能性もあるでしょう。

子育てに悩んでいる保護者も多いと理解する

親や保護者だからといって、子育てに自信を持っているとは限らず、むしろ不安を抱えながら子どもと接している人もいます。

そしてそのような親や保護者は、子どものことを大切に思うあまり、冷静さを欠いて理不尽な要望を保育士へ向けてしまうこともあります

身勝手で過剰な要望については、クレームとして毅然と対応すべきですが、保護者の気持ちを考えながら、みんなにとって有益な解決策を検討していく姿勢も必要です。また、そのような想像力を養うことが、保育士として自分の身を守ることにもつながります

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