保育士をやめたいと考える理由として、保育園など職場の労働環境や働き方に関する内容も数多く挙げられますが、職場環境を考える際は通常の給与・賞与だけでなく、福利厚生の充実具合も大切なポイントになります。
福利厚生とは、会社から従業員へ対して支払われる報酬のうち、通常の給与や賞与といった金銭とは別に、追加で支給される「非金銭報酬」とされています。
また、近年は福利厚生サービスを提供する専門会社も増えており、企業が法定外福利厚生として外部へ福利厚生をアウトソーシングするケースも少なくありません。
福利厚生の対象は原則として「日雇い労働者(日々雇用者)を除く全労働者」とされており、正社員だけでなく、パートやアルバイトといった非正規社員も対象範囲に含まれます。
また、2020年4月に施行された制度「同一労働同一賃金」において、従業員の雇用形態にかかわらず、同じ内容の労働を行う従業員に対しては均等・均衡待遇を確保することが原則とされ、福利厚生の格差についても是正が求められました。
そのため、原則的には正規雇用の保育士であっても非正規雇用の保育士であっても、同じ福利厚生施設を利用できたり、勤務期間や勤務時間に応じた福利厚生を平等に受けとれたりできるとされています。
※参照元:厚生労働省|同一労働同一賃金ガイドライン(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190591.html)
福利厚生の中には、保育士の配偶者や子どもといった家族を対象としているものもあり、合わせて確認しておきましょう。
公立保育園の運営母体は都道府県や市町村といった地方自治体であり、保育士の扱いも地方公務員になります。そのため、公立保育園では各種保険を始めとして、産休・育休の取得が保証されており、保育士に対する福利厚生は完備されているといえるでしょう。
法定福利厚生は法的に義務づけられている内容です。そのため、もしも保育士として適正な法定福利厚生を受けられていない場合、その保育園や運営会社は違法な状態にあるといえます。
一方、法定外福利厚生については企業が独自に条件や内容を設定しているため、詳細については雇用契約を交わす際に確認しておくことが必須です。
また、その他にも食堂や更衣室、休憩室といった福利厚生施設として用意されているものがあります。
保育士の福利厚生として、病気やケガの治療費の負担が軽減される公的医療保険(健康保険)は非常に重要です。健康保険料は原則として労働者と雇用主が折半する「労使折半」となっており、給料から天引きという形で保険料を支払います。
老後の年金についても、福利厚生として大切なポイントです。厚生年金もまた健康保険と同様に労使折半として費用が支払われ、労働者の支払い分については給料から天引きされます。
40歳以上の保育士に対しては、介護保険への加入が始まります。保険料は労使折半です。
雇用保険に加入している人に対しては、失業した際に一定条件に従って「基本手当(失業手当)」が給付され、生活の安定や就職活動に活かすことができます。
雇用保険にかかる費用は原則として労使折半となっていますが、雇用安定事業や能力開発事業といったものについては、事業主の全額負担となっています。
時には園外へ子どもを引率したり、送り迎えのバスに同乗したりすることもある保育士にとって、労災保険も欠かせません。
労災保険(労働者災害補償保険)とは、労働者が勤務中や通勤中にケガをしたり事故に遭ったりした場合、それを業務災害・通勤災害として扱い、治療や社会復帰へ必要な費用を労働者へ迅速に給付することを目的とした制度です。
労働者に対する労災保険の提供は、事業主にとっての責務であり、必要な費用は事業主の全額負担となります。
なお、悪質な事業主の場合、保育士が勤務中にケガをした際に、労働基準監督署へ適切な報告をせずに保育士へ治療費だけを渡して済ませようとすることがありますが、これは「労災隠し」と呼ばれる犯罪行為に当たるため、注意しなければなりません。
学校教育法第1条に規定する幼稚園(認定こども園を含む)のように、公立施設へ正職員として勤めている保育士の場合、福利厚生についても民間の保育士でなく地方公務員としての扱いが適用されます。そのため、公立施設の保育士は共済組合へ加入して、福利厚生を受けることになります。
労働基準法が定める勤務期間や出勤率といった条件を満たしている労働者に対しては、年間10日以上の有給休暇が認められ、労働者の申し出に従って企業は有給休暇を認めなければなりません。
有休取得は労働者の権利であり、基本的に事業主がそれを断ることは、労働基準法の違反となります。
ただし、事業主には労働者に対して有休取得日のタイミングを交渉する権利も認められており、保育士の場合は繁忙期や人手不足といった理由で、自由に有休取得が叶わないこともあります。
有休の取りづらさは保育士がやめたいと考える理由の1つになっているため、あらかじめ意識しておきたいポイントでしょう。
なお、2019年4月の労働基準法改正によって、有休期間のうち「年5日」については、企業から必ず労働者へ与えなければならないという「年次有給休暇の時期指定義務」が制定されました。言い換えれば、有休取得率が平均5日以下の保育園に関しては注意が必要です。
※参照元:厚生労働省|年次有給休暇の時季指定義務(https://www.mhlw.go.jp/content/000350327.pdf)
一般的に産休・育休と呼ばれる休暇です。特に、産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)・産後8週間の期間や、出産日から子どもの1歳の誕生日の前日までの期間については、法定福利厚生の休暇として定められています。
その他、要介護者が家族にいる労働者に対して、一定期間の介護休暇が認められることもあります。
ただし、育休や介護休暇などは労働者の側から申し出るため、実際に産休・育休・介護休暇などを活用しやすい職場かどうか、あらかじめ雰囲気を知っておくことが重要です。
子ども・子育て拠出金とは、児童手当の支払いや子育て支援事業への支出など、仕事と子育ての両立を推進するための費用捻出に充てられるお金であり、事業主が全額を負担する法定福利費です。
労働者である保育士にとっては関係ないと思われる費用ですが、子ども・子育て拠出金は、子育て世代の保育士にとって重要な児童手当の原資となっています。
住宅手当や家賃補助は、賃貸マンションやアパートなどで暮らす保育士のために事業主から支払われるお金です。事業主によって、一律の金額が設定されていたり、一定範囲内で家賃の額に応じて変動したりと条件は異なります。
また、住宅手当や家賃補助がない代わりに、専用の社員寮を提供しているケースもあります。
自宅から保育園まで電車やバス、車を利用して通勤している保育士にとっては、交通費の支給も重要です。
支給される交通費は、自宅から勤務地までの距離や通勤時間、または自宅と保育園それぞれの最寄り駅を基準とした電車運賃や定期券購入費をベースとして、金額が算出されることが一般的です。また、事業主によっては一律の金額や上限を設定していることも少なくありません。
家族手当は、配偶者や子どもを持つ労働者に対して、企業が一定の金額を支給する制度です。手当の有無や金額の相場はエリアや事業主によって異なるため、家族のいる保育士はきちんと確認しておきましょう。
労災保険などの他にも、従業員の病気やケガの治療、生活習慣の改善や健康診断に対して、企業が経済的支援を行ってくれることもあります。
また、企業によってはジムやクリニックなどと提携して、健康的なライフスタイルの獲得をサポートしてくれることもあるようです。
冠婚葬祭といった慶弔時に対して、一定金額をお祝い金や見舞金として支給する制度です。また出産した労働者へ出産祝い金を支払う企業もあります。
有給休暇とは別に、企業が独自の休暇を設定していることもあります。
休暇の種類としては夏季休暇やリフレッシュ休暇、慶弔休暇、誕生日休暇など様々なものがあり、ライフワークバランスを考える上でも休暇の種類や日数は重要です。
カフェテリアプランとは、事業主が一定期間ごとに労働者へ「ポイント」を与え、個々の労働者が決められた範囲内で自由にポイントの活用法を決められる、選択型の福利厚生です。
※参照元:厚生労働省東京労働局(https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/yokuaru_goshitsumon/tingin/q16.html)
法定外福利厚生は、企業が独自に設定できる非金銭報酬であり、中には極めて独自性の強い取り組みや福利厚生を用意している企業も少なくありません。
ただ、基本的に福利厚生が充実している企業は労働者へのケアがしっかりしていると考えられるので、保育士にとってもきちんとした福利厚生のある保育園を選ぶことは大切です。
福利厚生の主目的は、従業員の勤労意欲や職場環境の改善といったものであり、福利厚生について真面目に考えている事業主ほど従業員のことを真剣に考えているとも言えます。そのため、求人票や面談で福利厚生についてきちんと説明してくれないような保育園や事業主は、転職先として注意すべきかも知れません。
求人票で福利厚生について色々と魅力的な内容が書かれていても、実際は諸手当を受け取れる条件が厳しかったり、有休を取得しづらい雰囲気があったりすることもあります。福利厚生に関しては、単に項目数や種類を見るだけでなく、可能な範囲で条件や取得率などを確かめておくことが大切です。
法定外福利厚生として社員旅行やイベントを企画している事業所もありますが、暗黙の了解として参加が強制されている場合、人によってはむしろ精神的負担になってしまう可能性もあるでしょう。園内の業務を円滑に進めるために周囲と良好な人間関係を保つことは重要ですが、あくまでも自分のライフスタイルとの親和性を考えることも必要です。また、旅行や食事会などへの参加を断る場合、角の立たない断り方を考えることもトラブル回避のポイントです。
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引用元HP:株式会社メディフェア公式HP(http://medifare.jp/)
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